文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 (複合領域:4201)
研究期間:平成22年度~平成26年度
[English]
A02-5-23 公募研究
研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/mri/mgen/index_j.html
新しいオミックス技術が開発され、「がんの個性」や「患者の体質」を規定する遺伝情報を系統的にスクリーニングすることが可能になった。そこで本研究は、ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム情報を応用することにより、抗がん剤感受性の予測システムを開発し、がん患者の個別化治療を実現しよう とするものである。 具体的には乳がん組織の遺伝子発現解析から得た 2万7千プローブセットのmRNA情報に、新たにmicroRNA(miRNA)情報、ゲノム構造情報を加え、高度な情報科学的解析技術を駆使して、(1) 乳がんのサブタイプ分類(intrinsicsubtype)のため、現在のクラスタリング法に代わる簡便で高精度な分類システムを構築し、分子サブタイプ毎に抗がん剤感受性予測システムを整備することによって個別化抗がん剤治療の実現を目指す。また、(2) 分子サブタイプの生物学的機能の特徴を2万7千遺伝子の発現情報、miRNA・ゲノム構造情報から描き出し、分子病態の違いを細胞機能システムとして理解する。その結果、乳がんの根幹に流れる分子病態を導き出せる可能性がある。
本研究は東京医科歯科大学難治疾患研究所分子遺伝学教室、および癌研究会癌研究所がんゲノム研究部で行う。本研究に必要な分子細胞学的、情報科学解析を行うための設備・機器等は十分整備されている。また、本研究の研究成果は、ホームページに掲載し、国内外で開催される研究会、学会等で発表する。また、我々はこれまでに、乳腺発がん機構におけるBRCA1、BRCA2遺伝子の機能、乳がんにおけるストレス応答性アポトーシス誘導機能を明らかにした。
(1) 精度の高い乳がん分子サブタイプ分類システムを構築するために、mRNA、miRNA、ゲノム構造の網羅的解析を合わせて行い分類システムを構築する。そのためにまず、質の異なるmRNA、miRNAとゲノム構造情報をどの様に分類システムに組み入れていくかを検討する。
(2) また、各サブタイプの細胞機能の違いをmRNA、miRNA とゲノム構造情報を用いて解析する。これには機能的連関を教慮した細胞機能推定システムを作製する。(23年度)
(3) 現在、知られているがん形質を規定する重要な細胞特性情報を抽出し、それら特定のmRNA、miRNA、ゲノム構造の機能的連関を応用した細胞機能推定システムを考案する。それを用いて各サブタイプ間の生物学的特徴を解明するとともに、正確で簡便な分子サブタイプ分類システムを構築する。
(4) 高精度の抗がん剤予測システムの構築はサブタイプ毎に行う。そこでも、mRNA、miRNA、ゲノム情報を利用するアルゴリズムを創出する。また、ヒトがん細胞株の網羅的なリン酸化タンパク解析情報と抗がん剤感受性情報を、患者乳がんの抗がん剤予測システム構築に応用していくための検討を行う。(24年度)
統計学的手法に関しバイオインフォマティクスを専門とする松浦の指導の下で行い、三木が研究全体を統括する。