システムがん

システム的統合理解に基づくがんの先端的診断、治療、予防法の開発

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 (複合領域:4201)
研究期間:平成22年度~平成26年度
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A01-9-23 公募研究

悪性神経膠腫の多様性克服に向けたシステム生物学的アプローチ

  • 研究代表者: 武笠 晃丈(東京大学 医学部附属病院 脳神経外科 特任講師)
  • 連携研究者: (未定)

研究室ホームページ

悪性神経膠腫の治療抵抗性の一因となっている著明な腫瘍内多様性の機序を、システム的アプローチにて明らかにして、脳腫瘍の個別化治療の開発に導くことを目的とする。このため、同一起源の腫瘍の内での多様性を検証可能な検体ペア、例えば、治療抵抗性の根源と近年提唱されている腫瘍内在性の脳腫瘍幹細胞株の樹立を行った症例、腫瘍内部の多様性に従って検体を複数箇所取得した症例、低悪性度神経膠腫が悪性転化をした症例、薬剤耐性獲得・再発症例などの網羅的解析データをセットで新たに取得する。先進の情報解析技術のもとで、これらのデータやこれまでに応募者自身が取得した膠芽腫の分子標的治療耐性に関わるEGFR 代替パスウェイに関する機能データを用いて、公共データベースに公開されている大量のオミクスデータを読み解くことで、神経膠腫の腫瘍原性・腫瘍幹細胞化・悪性転化・治療耐性獲得に関わる腫瘍プロファイルの変化や、将来の治療標的ともなりうる分子・シグナル伝達経路を同定したい。

これに当たり、倫理委員会の承認を得た研究同意取得済みの悪性神経膠腫の検体を、現在までに約400 検体ほど凍結保存しており、その多くにおいて既に基本的な遺伝子変異のデータを解析済みである。また、さらなる検体取得を行える多施設の共同研究体制を構築してある。

本研究成果は、発表論文の他、ホームページなどでも社会・国民に発信していく予定である。
研究の基盤となるデータは、複数の海外研究助成金と基盤研究(C)(H20-22)に支援され取得してあり、その成果の一部は学会及び論文などにて発表した(Mukasa et al. PNAS 2010 等)。

ヒト臨床腫瘍検体の時間的あるいは空間的な変化や多様性を示すペア材料を利用して、主にゲノム網羅的なDNA メチル化解析を既存のマイクロアレイ法を用いて行う。これに加え、鍵となる検体に関しては、メチル化データを補完するトランスクリプトームデータをマイクロアレイにて取得する。この他、必要なものに関してはSNP アレイによるゲノム変異解析、マイクロRNA 解析、プロテオミクス解析を施行して統合的なデータを得る。

具体的に比較解析する検体ペアとしては、1.脳腫瘍幹細胞とその分化誘導細胞及び親神経膠腫検体、2.腫瘍内悪性化をきたした症例の低悪性部位と悪性部位、3.初発神経膠腫と悪性転化をきたした再発腫瘍の経時的な手術検体、4.抗癌剤抵抗性獲得(再発)前後に取得した検体を予定している。

以上のような網羅的解析の比較データを鍵となる情報として、公共のデータベースに登録されている取得可能な大量な脳腫瘍のオミクスデータを利用して、当該領域の研究により開発されるシステム的情報解析プラットフォームにて統合解析を行うことで、神経膠腫の腫瘍原性・腫瘍幹細胞化・悪性転化・治療耐性獲得に関わるような遺伝子発現プロファイル、メチル化プロファイル変化などの特徴を抽出する。

このようを抽出したプロファイルに、これまでに公募者自身が取得した神経膠腫・細胞株の遺伝子発現データ、EGFR 代替パスウェイに関する機能データを関連づけ、さらにカテゴリー解析やパスウェイ解析などのシステム的な解析を加えることで、それに関わる特定の分子・シグナル伝達経路の候補を同定する。

最終的には、その特徴的な変化や、同定した分子の発現、シグナル伝達経路の活性の違いに基づく個別的ながんの治療法の開発を目指す。

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