システムがん

システム的統合理解に基づくがんの先端的診断、治療、予防法の開発

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 (複合領域:4201)
研究期間:平成22年度~平成26年度
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A01-7-23 公募研究

動的なゲノムシステムとしてのがん病態における分子ネットワーク異常の解明

  • 研究代表者: 柴田 龍弘(国立がん研究センター 研究所 ゲノム研究グループ がんゲノミクス研究分野 分野長)
  • 連携研究者: 角田 達彦(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター 統計解析・技術開発グループ グループディレクター)

研究室ホームページ http://www.ncc.go.jp/jp/nccri/divisions/19genom/19genom.html

がんという病態は、ゲノムの動的な変化過程によって形成された分子システム異常として捉えられ、その本態解明には、がんで起こっているゲノム・エピゲノム異常をグローバルかつ時系列の視点から解析する必要があると考えられる。本研究では、最近増加が著しい進行性乳がんと死亡率の高い膵がんを対象として、がんの悪性度を規定する生物学的特徴(特に転移並びに治療抵抗性に着目)の背景にあるゲノム・エピゲノムの変化を時系列の視点から包括的かつ統合的に捉え、がんの病態を動的なゲノムシステム異常として理解するためのデータ基盤を提供し、その解析から新たな治療標的の同定を行う事を目的とする。豊富ながん臨床研究資源・腫瘍病理医としての知識と経験を活かし、臨床的に重要ながんの病態を解明するために特徴的な検体を対象とし、ゲノム統計解析学を専門とする連携研究者との綿密な協力の下で、全エクソン解析等最新のゲノム解析技術と統計的情報解析手法を合わせて駆使することで、動的なゲノム変化によるがん分子ネットワーク異常の抽出・解明、並びに、革新的ながん治療法開発にとって重要なゲノム異常標的の同定といった研究成果が期待される。

高速シークエンサーの稼働並びに1次データ解析に関しては、国際がんゲノムコンソーシアム研究等の遂行によって、解析アルゴリズムも含めてすでに十分な経験とノウハウを有している。解析対象となる検体収集・倫理審査委員会の承認・実験条件検討は終了している。連携研究者を含めたグループとは定期的に情報交換を行っており、スムーズな連携が可能である。本研究の成果は、学会発表や論文発表に加えて、国民の方にわかりやすい形で伝える機会を設けるように努める。これまで研究代表者あるいは分担者として網羅的ながんゲノム解析とその臨床応用に関する研究費を複数受け、十分評価に足る研究成果を発表している。

(平成22年度)進行乳がんの原発巣とリンパ節転移巣のペア並びに、化学療法抵抗性を示し再発した進行膵がん検体各4症例を最初のスクリーニングの解析対象とし、微量検体用に改良した独自のプロトコールに準拠してDNA キャプチャー法による全エクソン領域の濃縮と高速シークエンサーによる全エクソン解読を行う。その結果を、正常DNA とがんDNA (乳がんの場合は、原発巣並びに転移巣)の間で比較し、その差分を取る事で体細胞変異あるいは転移特異的な変異を包括的に同定する。変異機能予測を行い、更に多数がん臨床検体を用いた検証実験を進め、統計学的に症例間のヘテロ性や多重検定問題への対策を行いながら、機能的な意味付け (functional annotation)を基に分子ネットワーク解析を行う。

(平成23年度)進行乳がん細胞株(4種類)並びに抗がん剤感受性・抵抗性膵がん細胞株(各3種類)に対して、ChIP-シークエンス解析によりポリコーム複合体の標的領域を網羅的に同定し、同一検体の全mRNA 解読と比較解析しながら、標的遺伝子候補の発現量やスプライシング変化を求める。得られたゲノム・エピゲノム変化とその機能的推測を統合的に解析し、変異情報,発現情報,エピゲノム情報間の関連について,ベイズ推論などの数学的手法を駆使して解析し,トランスオミックスの因果関係を探る枠組みの検討と動的変化を加味した新たながん分子統合システムモデルの構築を試みる。

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