システムがん

システム的統合理解に基づくがんの先端的診断、治療、予防法の開発

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 (複合領域:4201)
研究期間:平成22年度~平成26年度
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A01-10-23 公募研究

がん細胞でドライバー変異を起こしている遺伝子の同定法の確立

  • 研究代表者: 横田 淳(国立がん研究センター 研究所 ゲノム研究グループ 多段階発がん研究分野 分野長)
  • 連携研究者: (未定)

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近年の網羅的なゲノム解析はヒトがん細胞における多様なゲノム異常の存在を明らかにした。しかし、その中から発がんの原因となるドライバー変異と発がん過程あるいは細胞分裂に伴って付随的に起こるパッセンジャー変異を見極める方法は確立していない。そこで、本研究ではヒトがん細胞におけるゲノムの増幅、欠失、遺伝子内コピー数変化、LOHなど、多面的なゲノム動態異常のデータと遺伝子発現プロファイリングのデータを組み合わせたシステム的アプローチにより、発がんドライバー遺伝子の同定法を確立する。対象とするがんは本邦におけるがん死因第1位の肺がんとし、多様性を有する腺がんと最も予後不良な小細胞がんに焦点をあて、同一症例のゲノム動態(多型・変異・コピー数変化)と発現プロファイルの情報を組み合わせて、ゲノム動態の変動に起因する発現変動遺伝子群を同定する。これらをドライバー変異遺伝子の候補として臨床病理学的所見や診療情報との比較解析を行い、多様な肺がんの病態と予後不良の原因となる遺伝子群の同定および予後不良群抽出に有用なバイオマーカーの同定を行う。この際、領域代表者と共同研究を進めてきた増殖因子/がん幹細胞シグナル遺伝子群が肺がんの特性に与える影響について、より大規模かつ詳細な診療情報を有する症例コホートを用いた検討も進めていく。本研究では、申請者がこれまでの第3次対がん総合戦略研究事業で収集した200例以上の同一症例がん組織及び非がん組織からのDNA/RNAを用いてドライバー変異遺伝子とバイオマーカーの同定を行い、追加症例を用いて有用性の確認を行うことができる。本研究によって同定される肺がん術後再発高危険群などに対する診断バイオマーカーや悪性度規定遺伝子群は分子標的創薬のシーズとなる可能性が高い。

肺腺がん手術例200例と肺小細胞がん20例のがん組織と非がん組織から抽出したRNAを用いてAffymetrix U133Plus2.0 array解析、DNAを用いて250K SNP array解析を行う。SNP array解析で増幅・欠失・遺伝子内コピー数変化・LOHを起こしている遺伝子の発現量を発現プロファイリングデータから算出し、システム的アプローチにより、増幅領域内で高発現している遺伝子、欠失領域内で低発現あるいは発現消失している遺伝子、遺伝子内コピー数変化があり、発現が高いあるいは低い遺伝子などを抽出する。さらに、予後不良な肺腺がん80例と肺小細胞がん20例に関しては全RNA・エクソンシークエンシングを行い、体細胞変異や転座(融合)のデータとゲノム変動データを比較することにより、ドライバー変異遺伝子の可能性を追求する。 これらの解析の結果、同定されてきた遺伝子は、がん遺伝子あるいはがん抑制遺伝子として細胞のがん化あるいは悪性化に関わっている可能性が高く、さらに変異解析やメチル化解析を行って活性化変異・不活性化変異の様式と特異性、頻度を明らかにする。 以上の結果を総合して、がん細胞で特異的にドライバー変異を起こしている遺伝子群を同定し、さらに、それらの遺伝子の変動に基づいた診断法、治療法の開発研究を推進する。

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