A02-1 計画研究

ノンコーディングRNAによる発現統御ネットワークの解明に基づくがんの個性の描出

研究室ホームページ http://www.med.nagoya-u.ac.jp/molcar/jp/

正常な細胞の営みの進行には、ヒトゲノム情報が調和を保って必要十分に読みだされる必要があり、そこにはシステマティックな発現制御機構の存在が示唆される。がん細胞の分子病態は、多段階的な複数の遺伝子の機能異常に起因して、このシステムが統御を逸脱した状態と捉えることができる。そこで、癌関連マイクロ RNA を始めとするノンコーディング RNA 全般に注目し網羅的解析データを取得し、さらに全ゲノム的なトランスクリプトーム (マイクロ RNA の殆どは mRNA の発現レベルも抑制する) とプロテオームの網羅的解析データも合わせて取り込んで進める、スーパーコンピュータを駆使した数万次元に及ぶ大規模な、静的或いは動的な発現制御ネットワークの推定を基盤とする研究アプローチを展開する。本申請者らが肺癌の発生・進展への密接な関与を示してきたマイクロ RNA や DNA ダメージレスポンスの異常、或いは、リネッジ特異的生存シグナルへの依存等において、その分子病態の要として機能し、ネットワーク上のハブとなる遺伝子群を、ノンコーディング RNA を含め網羅的に同定していく。さらに同定したハブ遺伝子を含む、予測能力を持った生命体分子ネットワークのシミュレーションモデルを構築し、その分子生物学的及び細胞生物学的な検証を行う。これらのウェットとドライの研究手法の融合を通じ、癌の発生・進展の分子機構の全体像の解明や、分子病態の個性をシステムとして読み解き、先端的な診断や個別化医療の実現基盤を構築することを目指す。

なお、多角的な網羅的発現解析に必要な備品は完備しており、基本的なバイオインフォマティクス解析に必要な複数のワークステーションと、プログラミング及び解析ソフトウェアも研究室に完備している。さらに、総括班内の支援班との密接な共同研究を通じて、スーパーコンピュータを用いた高度なネットワーク推定を推進する体制の準備もすでに整いつつある。

過去の情報

2010年度