A01-1 計画研究
研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/mri/cgen/framepage.htm
がんに対する治療を困難にしている転移や手術後再発、ならびにこれらの病態と密接に関連するがん幹細胞や上皮間葉転換 (EMT) の制御異常などがん細胞に特有の性質 (がん特性) は、がんの病態において時空間的に連続的であるにもかかわらず、従来、その生物学的な解析は独立した位相でとらえる傾向にあった。このため、これらの特性に共通あるいは特異的な分子機序に関する知見が未だ乏しく明確になっていない。本研究では、がん幹細胞、EMT 制御異常、がん転移の 3 つの重要な現象について、in vitro/in vivo 実験モデル系を独自に確立し、かつ申請者らが 10 年以上をかけて構築したがんのゲノム・エピゲノムハイスループット解析系や機能的スクリーニング系で得たデータをもとに、細胞分化、EMT、浸潤・転移の 3 次元に拡張させてがん細胞のシステム変化 (ネットワーク) のプロファイリングを行う。 これにエピゲノム情報などとの関連性を解析することによって、 3 次元から見たときのネットワーク構造の変化とエピゲノム情報との関連を抽出し、細胞分化、EMT、浸潤・転移の悪性度に共通、もしくは、いずれか 3 つに共通して関わっているパスウェイを探索する。このようながん細胞システムの理解は、がん細胞の自己複製・増殖、浸潤・転移、薬剤耐性・細胞休止 (dormancy)、がん幹細胞性などの分子機構のシステムとしての理解につながるだけでなく、それら がん細胞システムの背後にあるがん細胞の脆弱性の理解に至り、結果、従来の取り組みでは不可能であった難治がん克服の新たな治療戦略情報を導き出すことができる。
本研究の実施に極めて重要である in vitro/in vivo スクリーニング・検証系については既に独自のモデル系を確立しつつあり、また、技術的に要となる網羅的スクリーニング解析系や機能的スクリーニング系に関しても既にそれらシステムを構築しており、盤石の研究体制を整えている。
文科省科研費 (がん特定) や JST・CREST の支援でがんゲノム・エピゲノム解析を行い総計 70 種以上の新規がん関連遺伝子を同定したが、これらは今回のがんシステム生物学アプローチの基盤になっている。