A02-7-25 公募研究
研究室ホームページ http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/nakamura/matsuda/index.html
ここ数年の次世代シークエンサーの普及により、癌で異常が生じている遺伝子の網羅的な解析が盛んに行われている。その結果、様々な癌で新規の癌抑制遺伝子・癌遺伝子が同定されつつあるが、多くの癌において最も高頻度に変異が認められる遺伝子がp53であり、今またその重要性が再認識されている。 P53は様々な機能が報告されているが、p53変異はDNA結合領域に集中していることから、p53の転写因子としての機能が発癌抑制に特に重要と考えられる。 これまで我々の研究グループではp53の癌抑制機能を解明するため、多数の新規p53下流遺伝子を同定してきた(右上図:赤字の遺伝子)。その結果、p53はアポトーシス誘導や細胞周期停止のみならず、DNA修復や細胞老化など様々な経路を介して、発癌を抑制していることが明らかとなった。 これまでの解析は主に癌細胞株が用いられてきたが、より生理的なp53の機能を解明するため、マウスを用いてp53ネットワークの全貌を明らかにすることを本研究の目的とする。p53野生型およびp53を欠失しているマウスにX線を照射し、各マウスから肺、心臓、肝臓、腎臓、胃、小腸、大腸など、計20臓器を抽出する。各臓器から抽出したRNAを用いてTranscriptome解析を行い、p53による癌抑制機構の全貌の解明を目指す。